【社内ニート日記⑩】マスク美人に出会った午後。鎧の下にあった「ほうれい線」とプライド

社内ニート日記
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来客応対をしていると、月に何度か来る顧客の顔と名前を、自然と覚えてしまう。

その中に、「マスク美人」がいる。

彼女は、私の中でずっと”森口博子似”だった。

初対面なのに、なぜか親しみが湧く人だった。

毎回感じる、柔らかい雰囲気。「良い人そうだな」「おじ様たちに好かれそうだな」。そんな印象を、勝手に抱いていた。

そして、ついにその日が来た。

梅雨の足音が近づく、ある日のことだった。

「ピンポーン」とインターフォンが鳴る。

玄関を開けると、そこには、マスクをしていない、マスク美人(元)が立っていた。

森口博子?

あれ、なんか違う……?

私の脳内では、ずっと森口博子だったのに、実際は――

なんというか、雰囲気の良い部分と、少し力強い印象の部分が入り混じったような、想像とは違う顔立ちの女性だった。

(褒めてます、たぶん)

でも、挨拶や笑顔は変わらなかった。確かに、ずっと応対してきた”あの人”だった。

マスクの力は、侮れない。

私も、毎日マスクをしている。というか、事務所全員が、なんとなく空気的に外せない状態だ。

きっと外せば、「ほうれい線バッチリの中年女」だとバレてしまうだろう。

マスクの奥に隠しているのは、顔だけじゃない。ちょっとした自信と、心の鎧でもある。

若い子がマスクを外せない理由も、痛いほどよく分かる。

マスクは、心の防御壁にもなる。

でも、できることなら、マスクなしでも堂々と立てる人間性を持ちたいとも思う。

とは思うものの……

でも私は、社内ニートだから。

しばらくは、マスクを手放さないと思う。

マスク美人万歳。


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