オフィスの音が気になるのは、私だけだろうか。
無理もない。日中、みんな隣接する倉庫にいるため、事務所には2人きりなのだ。
その2人きりの相手は、いつもオーバーサイズの推しのパーカーを着ている20代の事務員だ。
黒と白、色違いで2着持っているらしく、その日の気分で着回している。
以下、パーカー女子と呼ばせてもらう。
右隣の席から、今日も炸裂する計算機クラッシュ音。
やめてくれと、心の中で叫ぶ。
いつも思うのだが、パソコンや計算機の音がやたらと大きい人というのは、どれだけ指圧が強いんだと思ってしまう。
これは私が独自に思っていることだが、大きな音を出す人というのは、見た目や態度がおとなしそうでも、実は自己顕示欲が高かったり、「自分は仕事ができる」というプライドが強い人ばかりのような気がしてならない。
大きな音を出さなくても、できるはずだ。
そう言いたい。
感情のコントロールができないのか、それとも周りにアピールしたいのか。
観察していると、間違いなくどちらかだろうと思ってしまう。
仕事に集中していたり、やることで忙しければ、こんな出来事にいちいち反応することもないのが事実だ。
そう、私は究極の暇人だから、余計に目にも耳にも入ってきてしまう。
音が気になってしまう自分の感情も、どこか「自分の立場を脅かされているような焦り」から来ているのかもしれない。
嫉妬や、自分のやるべきことを取られまいと必死に守ろうとする感覚。きっとそれに似たものなのだろうな、と思ってしまう。
私は数ヶ月前、この20代女性と張り合ったり、無理してでも仲良くしようと自分を押し殺してコミュニケーションを取ろうとしたことがあった。
でも、今はその気持ちもなくなった。
だって、コミュ力が高い人でさえ、この関わりを諦めてしまっていたのだから。
それにしても、音だけはやっぱり耳障りなのだ。
この業務の一部を、毎日15分程度担当しているが、やっていることは、伝票をただひたすら足し算して検算するだけ。
大した計算ではない。なのに、隣から炸裂するタイピング音。
全国に営業所がある規模の会社とは思えない。
未だにシステムが導入されていないこの非効率さが、「タイピング音強モンスター」を育ててしまうのだ。
2〜300枚の伝票を、毎日手で計算していくなんて、さすがに限界がある。
効率が悪すぎて、なんとも言えない気持ちだけが残る。
決して、事務仕事を軽視しているわけではない。
でも、こんな根性で回す作業が、正社員の仕事として成立している現実に、さすがにうんざりする。
それでも彼女は、検算を終えるたびにドヤ顔を決め、今日もすました顔をしている。
無音の事務所も、なんだか味気ない。
でも、タイピング音は、なんだか腹が立ってしまう。
社内ニート、今日も静かにイライラしていた。
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